イタリアの春、復活祭(イースター)の時期に食卓を彩る伝統的なお菓子が、コロンバ・ディ・パスクア(Colomba di Pasqua)です。
イタリア語で「鳩」を意味する名前を持ち、平和のシンボルである鳩をかたどった形が印象的です。
軽やかな生地には爽やかな香りのオレンジピールなどが混ぜ込まれ、表面はアーモンドやあられ糖(パールシュガー)で飾られており、祝祭の気分を盛り上げます。
クリスマスの定番「パネットーネ」や「パンドーロ」と同様に、この時期ならではの特別な焼き菓子としてイタリア国民に愛されています。
イタリア各地には家庭ごとのレシピや地域独自のバリエーションも存在し、イースターのお祝いに欠かせない存在となっています。

コロンバの歴史
コロンバのルーツには諸説あり、中世の伝説に由来するとも、あるいは20世紀初頭にミラノの菓子職人が生み出したとも考えられています。
中でも有力な説として広く知られているのが、1930年代にミラノの製菓会社「モッタ(Motta)」が、クリスマス菓子パネットーネの生地と製造技術を応用して開発したというものです。
第二次世界大戦後の経済成長期を経て、パネットーネと並ぶイースターの代表的な菓子としてイタリア中に広まっていきました。
また、平和のシンボルである鳩の形は、特に戦後の平和を願う人々の心に響き、復活祭にふさわしい菓子として定着する一因となったと言われています。
今日では伝統的な製法を守る職人による手作り品から、工場で生産されるものまで、様々な種類のコロンバが市場に出ています。

コロンバの特徴
コロンバを最も特徴づけるのは、平和の象徴である鳩をかたどったその優美なフォルムです。
パネットーネにも似た製法で作られる生地は、天然酵母(リエヴィト・マードレ)を用いて長時間発酵させることで、軽やかでしっとりとした食感と、豊かな風味が生まれます。
一般的には、生地に混ぜ込まれたオレンジピールなどの砂糖漬け果実が、春らしい爽快な香りを添えています。
表面を覆うのは、多くの場合、卵白、砂糖、アーモンドなどを混ぜて作る「グラッサ」と呼ばれる甘い層で、パールシュガーやアーモンドホールと共にトッピングされ、焼き上げることで香ばしさとカリっとした歯ざわりが加わります。
この甘く軽やかな味わいは、エスプレッソのような濃いめのコーヒーはもちろん、甘口のデザートワインとも相性が良く、イースター期間中の朝食や午後のひとときに楽しまれています。

コロンバの原材料
コロンバに用いられる主な原材料は以下の通りです。
【生地」
- 小麦粉
- 卵
- バター
- 砂糖
- 天然酵母 (リエヴィト・マードレ)
【風味や彩りを加える材料】
- フルーツピール : オレンジピールが最も伝統的
【表面のトッピング】
- グラッサ(糖衣)
- アーモンド
- パールシュガー(あられ糖)
使用される材料の具体的な種類や配合比率は、各家庭、地域、または製造者によって異なり、多様な味わいのコロンバが存在します。