暖かな日差しの中で桜を愛でながら食事やお酒を楽しむのが、日本の春の風物詩ですね。
一方、ヨーロッパではキリスト教における復活祭であるイースターを祝う時期を迎え、各地で特別な意味を持つ伝統菓子が食卓に並びます。
日本ではまだ馴染みの薄いものもありますが、それぞれの国で愛されるイースターのお菓子は、その土地の文化や歴史を映し出す鏡のような存在。
イースターの時期ならではの美味しいお菓子がたくさんあるので、ぜひ色々トライしてみたいものです。

ホットクロスバン
ホットクロスバンは、イギリスを発祥とする、十字の飾りが印象的な甘いパンです。
表面に入れられた十字の印は、キリストが架けられた十字架を表すとされ、特にイースター直前の金曜日、聖金曜日(グッド・フライデー)によく食べられます。
生地にはレーズンやカランツといったドライフルーツが混ぜ込まれ、シナモンなどのスパイスがふわりと香るのが特徴。
軽く温めて、溶けたバターを塗っていただくのが定番の楽しみ方。
イギリスの人々にとっては、春の訪れを告げる懐かしく、心温まる味わいとして親しまれています。

シムネルケーキ
イギリスのイースターに欠かせないのが、マジパンで飾られた華やかなフルーツケーキのシムネルケーキです。
その歴史は中世にまで遡るとされ、かつては母の日(マザリングサンデー)に贈られていましたが、時を経てイースターのお祝い菓子として定着しました。
ケーキを彩る最大の特徴は、天面に飾られた11個のマジパンボール。
これはイエスを裏切ったユダを除く11人の使徒を象徴していると言われています。
ぎっしりと詰まったドライフルーツの豊かな風味と、アーモンド香るマジパンの甘さが絶妙に調和した素朴な美味しさがあります。

ウサギのカップケーキ
イースターといえば、多産で生命力にあふれるイースターバニー(うさぎ)がシンボルとして広く知られています。
その愛らしい姿を模したウサギのカップケーキは、春の再生と豊穣を祝うイースターにぴったりのスイーツです。
多くの場合、基本となるカップケーキに、バタークリームやアイシング、マジパンなどを使ってウサギの耳や表情をデコレーションして作られます。
見た目のかわいらしさから、特に子どもたちからの人気は絶大。
家庭でも比較的簡単に手作りできるため、家族でイースターの準備を楽しむアクティビティとしても愛されています。

コロンバ
イタリアのイースター菓子といえば、「コロンバ・ディ・パスクワ(イースターの鳩)」の名で親しまれるコロンバです。
その名の通り、平和の象徴である鳩をかたどった発酵菓子で、キリストの復活と春の到来を祝う意味が込められています。
バターと卵をふんだんに使用した生地は、パネトーネにも似た軽やかでリッチな食感。
中にはオレンジピールなどの柑橘系の砂糖漬けが練り込まれ、表面はアーモンドやザラメ糖で香ばしく飾られます。
春の訪れを告げる、見た目も味わいも華やかなイタリアの伝統菓子です。

アニョーパスカル
フランスのアルザス地方やドイツ南部、スイスなどでイースターの時期に登場するのが、愛らしい羊の形をした焼き菓子アニョーパスカルです。
アニョーパスカルの「アニョー」はフランス語で「子羊」を意味し、キリスト教において子羊はしばしばキリスト自身を象徴する存在とされます。
専用の型で焼き上げられたスポンジケーキやバターケーキに、仕上げとして粉砂糖を雪のように振りかけるのが一般的。
その素朴で優しい甘さは、多くの人々に愛されています。
地域によっては、教会へ持参し祝福を受ける習慣も残っており、復活祭の神聖な雰囲気を今に伝えるお菓子です。

まとめ
世界各地でイースターに親しまれているお菓子を食べることから、単なる美味しさだけでなく、信仰に基づく深い意味や、その土地ならではの歴史と文化を知ることができます。
日本においてはまだ珍しいお菓子も多いかもしれませんが、その可愛らしい見た目や、ヨーロッパの家庭で手作りされる素朴な美味しさを体験できる良いチャンスです。
