イタリアの首都ローマで、朝のカフェに立ち寄ると、ショーケースに並ぶ魅惑的な姿に目を奪われることでしょう。
ふわふわのパンが口を大きく開け、たっぷりの生クリームをはみ出すように包み込んでいるデザート、それがマリトッツォです。
かつてはローマの地元民だけが愛する朝食メニューでしたが、今や全イタリア、そして世界中で人気を集めています。
マリトッツォの歴史
マリトッツォの起源は、古代ローマ時代にまで遡ると言われています。
当時は「パニス・マルケンシス」と呼ばれる素朴なパンで、蜂蜜やドライフルーツを混ぜ込んで作られていました。これが中世を経て、より洗練された形に進化していきました。
現在の名称「マリトッツォ」は、イタリア語で「夫」を意味する「マリート(marito)」に由来すると言われています。
その由来には、ロマンチックな伝説があります。
かつて、男性が婚約者にこのパンを贈る習慣があり、パンの中に結婚指輪を忍ばせることもあったそうです。
また、別の説では、四旬節(キリスト教の祝日)の間の唯一の「罪」として許された甘い食べ物だったとも言われています。
19世紀後半から20世紀初頭にかけて、マリトッツォは現在の形に近づいていきました。
特に、1950年代のローマで、朝食の定番メニューとして人気を博しました。当
時のカフェでは、マリトッツォとカプチーノの組み合わせが、忙しい朝のエネルギー源として重宝されました。
マリトッツォの特徴
マリトッツォの最大の特徴は、そのユニークな見た目と、味わいのコントラストにあります。
外側は、オレンジの皮やレーズンを練り込んだ、ふわふわとした甘いパン。
そして、そのパンを半分に切り開いて、たっぷりの生クリームを詰め込みます。
クリームは、パンからはみ出すほどに豊富に入っているのが特徴です。
口に運ぶと、まず柔らかいパンの食感と、ほのかな柑橘系の香りが広がります。
次に、口の中いっぱいに広がる生クリームの豊かな風味と、なめらかな口当たりが楽しめます。
パンの甘さと生クリームのまろやかさが絶妙なバランスを生み出し、一口で幸せな気分になれるデザートです。
伝統的なマリトッツォは、シンプルな味わいを楽しむものですが、現代では様々なバリエーションが登場しています。
チョコレートクリームやピスタチオクリーム、季節のフルーツを加えたものなど、創造性豊かなアレンジが楽しめます。
また、かつては朝食メニューとして親しまれていましたが、現在では一日中楽しまれるスイーツとなっています。
特に、午後のコーヒーブレイクのお供として人気があります。
マリトッツォの原材料
マリトッツォの主な原材料は以下のとおりです。
小麦粉 |
イースト |
砂糖 |
卵 |
牛乳 |
バター |
オレンジピール |
レーズン |
生クリーム |
バニラエッセンス |
一部のレシピでは、ラム酒やアニス酒などを加えて風味を強調したり、蜂蜜を使用して甘みを調整したりすることもあります。
また、最近のバリエーションでは、ピスタチオペーストやヘーゼルナッツクリームなど、様々な材料が使われています。
原材料の質、特に小麦粉と生クリームの品質が、最終的な味わいを大きく左右します。
新鮮で高品質な材料を使用することが、本格的なマリトッツォを作る秘訣です。