春のイースターはキリスト教における再生と希望を象徴する重要な祝祭です。
この季節、イギリスの家庭やティールームに登場するシムネルケーキ。
表面を明るい黄色のマジパンで覆い、11個の丸いマジパンボールが等間隔に並んだ見た目は、イースターならではの華やかさと象徴性を備えています。
中にはドライフルーツがたっぷり詰まり、スパイスの効いた奥深い味わいが楽しめるのも魅力。
単なるスイーツではなく、宗教的な意味や家族の絆、春の喜びを表す文化的背景を持つケーキです。。

シムネルケーキの歴史
シムネルケーキのルーツは中世にまで遡るとされますが、その発祥には諸説があります。
シムネルケーキののシムネルは、ラテン語のSimila(上質な小麦粉を意味する)が語源とされる説のほか、15世紀の王位継承詐称者ランバート・シムネルの名前に由来するというユニークな説も存在します。
また、サイモンとネルという夫婦がケーキ作りをめぐって意見が対立し、妥協の末にこのレシピが生まれたという民話も伝わっています。
最初は季節に関係なく贅沢なケーキとして親しまれていましたが、やがてキリスト教の四旬節と結びつきます。
断食期間中の中間地点にあたる「母の日曜日(Mothering Sunday)」に、奉公に出ていた子どもたちが帰省の際にこの栄養価の高いケーキを持ち帰る習慣が定着し、最終的にはイースターの祝菓としての地位を確立。
ヴィクトリア朝時代には、マジパンを使った装飾が現在のようなスタイルとして一般化しました。

シムネルケーキの特徴
シムネルケーキを象徴するのは、なんといってもそのユニークなデコレーションです。
ケーキの上面にはアーモンドの風味が豊かなマジパンが敷かれ、鮮やかな黄色で彩られることも多く、春の明るさを演出します。
その上に並べられた11個のマジパンボールは、イエス・キリストの弟子のうち、裏切り者ユダを除いた11人の使徒を象徴していると広く解釈されています。
地域によっては中央にもう1つ追加し、キリスト自身を表すこともあります。
ケーキ自体はドライフルーツや砂糖漬けのピールがふんだんに練り込まれたリッチなフルーツケーキで、スパイスが香る深い味わいが特徴。
伝統的には、ケーキの中間層にもマジパンを挟み込んで焼き上げることで、全体にアーモンドのコクが行き渡ります。
焼き上がった後、表面のマジパンを軽くトーストすることで、香ばしさと風味のアクセントが加わります。

シムネルケーキの原材料
シムネルケーキの主な原材料は以下のとおりです。
【生地のベース】
- バター
- ブラウンシュガー(またはグラニュー糖)
- 卵
- 小麦粉(薄力粉または中力粉)
【ドライフルーツ類】
- レーズン
- カランツ
- サルタナ(白ブドウのドライフルーツ)
- ドレンチェリー(砂糖漬けのチェリー)
- オレンジピール(砂糖漬け)
- レモンピール(砂糖漬け)
- その他のミックスピール(好みに応じて)
【スパイス】
- シナモン
- ナツメグ
- オールスパイス
- ジンジャー(粉末)
【マジパン(アーモンドペースト)】
- アーモンドプードル(粉末アーモンド)
- 粉砂糖
- 卵白 または 軽いシロップ(結着材として)
- 食用色素(黄色:見た目を華やかにする場合)
【その他】
- ベーキングパウダー(使用するレシピによって)
- ミルクまたはフルーツジュース(生地を調整するため)
- ラム酒やブランデー(ドライフルーツの風味付け用/任意)
これらの材料が調和し、焼き上げられることで、イースターのお祝いにふさわしい、豊かで満足感のある伝統的なケーキが完成します。